ずいぶん大きくなった夏みかんの木。
思いきって下からばっさり伐採してほしいということでした。
思いでの夏みかんの木を伐採する決断

この夏みかんの木は、この家を建てるときに実家から持ってきたの。
甘くて、毎年たくさん実がなって、いつも近所に配っていたのよ。
そういうことなので、樹齢は50年くらいのようです。
7メートルくらいはあるでしょうか。
幹は直径30センチくらいか。
家が建ち並ぶ街の中で、凜と立っています。

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聞くと、隣りのアパートに陽が入らないし、敷地の外まで枝が伸びてしまって、いろいろ問題がでてきたので、思いきって伐採してほしいとのことでした。
もともと、いつも頼んでくれるご年配のご夫婦です。
詳しい事情はわからないけれど、お隣りから言われたのか、自分たちの代のうちに切っておこうと思ったのか。
「仕方ねえんだよ。かわいそうだけどな」と旦那さん。
ずいぶん悩まれたようです。
私はなにも言えません。
それぞれ事情がありますから。
見積りをして、日程を決めました。
夏みかんの木の伐採
その日がきました。
お酒とお塩でお清め
毅然と、空に向かって伸びていますが、どこかさみしそうに感じるのは、気のせいでしょうか。
お塩とお酒を少しもらって、幹にかけて、お清めします。
大きな木を伐採するときは、いつもそうします。
生きているのだから。
ここで、この場所でじーっと、街を、家族を見てきたんですね。
季節になると実をつけて、その恵みを与えてくれて。
少しずつ少しずつ、なにもいわずに大きくなって。
こんなに立派になって。
そんなことを思っていると、なんだか涙がでてきちゃって、くしゃみをしてごまかしました。
お清めをして、手を合わせて、幹を両手で触れて、ごめんね、と呟きました。

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この木は役割を終えたのだと思うようにして、さあ仕事。
いきなり下からばっさりとはできません。
上の枝から少しずつ落としていきます。
山奥なら、「倒れるぞー」ってやるけれど、街中ではそうはいきませんから。
途中まで切り込んだところ。

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おばあちゃんが麦茶をもってきてくれたので、少し休憩。
旦那さんもでてきて、ふたりで、毎年たくさん食べたとか、家族で収穫したこととか、話していました。
眉間に皺を寄せて、まぶしそうに眺めていて。。。
仕事再開して、切り落としていきます。
幹だけにしてから、チェンソーで上から幹を切っていきます。
危ないから、下っ腹に力を入れて、気をつけて作業します。
リラックスして、それでも今の自分に気づいているように。
少しかわいそうに思いながら。
木くずが白くて、雪のように下に積もっていきました。
軽トラックに積みきれないほどの量です。

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終わりました。
切り口を見ると、きれいな年輪がありました。
さわると、さらさらで、少しひんやりしていました。
もう一度、お客さんと3人で手を合わせました。

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今回のお仕事は、大きな木だったので、処分代も含めて50000円でした。
今、物の値段があがっているから処分代も値上がりしちゃっています。
お代をいただき、処分場まで車を走らせます。
ぽんこつの荷台で、木がぎしぎし、みしみし音がしていました。
みかんの木が泣いているようでした。
ロープがけがゆるいじゃねえかと、私は、頭をごちんと叩きました。

