いつものおばあちゃん。
「破風板のペンキがはがれてみっともないから、直して」という依頼でした。
破風板だけ塗る
破風板というのは屋根の下の茶色かこげ茶のところです。
屋根の裏の白い部分を軒天といいます。
写真、やっぱり見ずらいですが、ペンキがところどころ剥げてしまっています。
木部はペンキがとれると防水がきかなくなるので、痛みがはやくなります。
といって、リフォーム屋さんとかに頼めば、全部塗りましょうと言われ、足場を組んでの大仕事になってしまいます。
まだ外壁は大丈夫。
そこで私の出番。
梯子で登れる場合、足場を組まなくても破風板だけ塗れます。
「小さな仕事でごめんね」とおばあちゃん。
「いつでもきますから大丈夫ですよ」
ケレンといって、はがれかけた塗装をヘラでごしごしはがしていきます。
それから木部は二度塗りします。
私はウレタンという、防水性の強い塗装を使いますので長持ちします。
下から「気をつけてー」。
いつもありがたいありがたいと暮らしているこの人は、人の痛みのわかる、思いやりのあるステキな人です。
梅雨の晴れ間の空は、淡い蒼色の空を雲がゆったり動いていました。
カラスが隣の家の屋根からこっちを見ていました。
写真がちょっと見づらいですね。。。
こういう風に完成。
やっぱりしゃしんがへたくそなので見づらいですが。。
木部は塗装がはがれたら、早めの対応をお勧めします。
早いほど、小さな修理で直る場合が多いですよ。
人を許せなくなるということ
その日、私はステキなことを学ぶことができました。
「お昼ですよー」とおばあちゃん。
ここのお客さんはいつもお昼を作ってくれます。
私は両手を合わせ、感謝を忘れないようにありがたくいただきます。
おばあちゃんは、いつも食べる私のそばに腰かけていろんな話をしてくれます。
その日もそうでした。
大船のフラワーガーデンに行ってきたこと。
それを押し花にしたこと。
色が鮮やか。
静かな華やかさというか、柔らかい味わいがあります。
それよりも、ちゃぶ台に向かって、ひとりで作業している姿を想像して、ひとりで生きているんだなあと感じました。
花の話が一段落した時、こんな話をしてくれました。
この前、娘さんから電話がかかってきたとき、(毎朝、娘さんが心配で電話をかけてくるそう)なんか用事で電話にでられなかったのだそうです。
そしたら娘さんが心配になって、隣の人に電話をして、隣の奥さんがすっ飛んできたのだそうです。
おばあちゃんが電気なのを確認して、「ふう びっくりした。 何もなくてよかった」と帰っていきました。
おばあちゃんは娘さんに電話をしました。
そしたら、かなり怒られちゃったのだということです。
娘さんは母親が心配なあまりのことだったけれど。
その話のあと、おばあちゃんのさりげない一言が胸に刺さりました。
「あまり真面目すぎると、人を許せなくなるときもあるのよね……」
わたしは、はっとなりました。
自分もいつの間にかそうなっているのではないのか。。。
一生懸命のあまり、寛容さをなくしているのではないのか。。。
人生の先輩を、「先生」というのだとしたら、やはりさすがだなあとしみじみしわくちゃの顔を見つめました。
穏やかな微笑みをみていると、ゆったり暮らしているのを感じます。
暮らしの静もりを味わいながら、押し花を作ったんだろう。
荷や苦やさみしさは、きっとある。
それでもそれらを受け止めて、悠々と毎日をすごしている。
説教がましくなく、さりげなくでた言葉に、深さがある。
そして体温がある。
涙がでそうになったので、肩にかけたタオルで、汗を拭くふりをして涙を拭きました。